川魚といえば、多くの方が鮎を思い浮かべるのではないでしょうか。鮎は「香魚」とも呼ばれ、独特の清々しい香りを持つ魚として知られています。主に初夏から夏にかけて旬を迎えますが、生育環境によっては秋口まで楽しめることもあります。鮎を最も美味しく食べる方法として、やはりシンプルな塩焼きがおすすめです。この記事では、鮎の生態から、美味しい塩焼きの作り方、そして綺麗に食べるコツまで、わかりやすくご紹介します。
そもそも鮎とはどんな魚なの?
鮎は鮭に似た体型をしており、背びれの後ろには「あぶらびれ」と呼ばれる柔らかいひれがあります。口は目の下まで裂けていますが、唇は柔らかく、歯は丸みを帯びています。「清流の魚」とも言われる通り、美しい川を好み、強い流れにも負けない力強さを持っています。背中は艶やかなオリーブ色をしているのが特徴です。
実は、鮎はその一生を川だけで過ごすわけではありません。成長段階に応じて川と海を回遊します。秋に川の河口近くで孵化した仔魚は、川の流れに乗って海へ下り、プランクトンなどを食べて3~5cmほどに成長します。翌年の春、稚魚となった鮎は川を遡上し、川の岩についた藻類などを食べるようになり、それに合わせて歯も生え変わります。成魚になると5~10cmほどの大きさに成長し、体の色も変化します。
鮎は縄張り意識が強く、自分の縄張り内の藻を主食とします。成長過程で食性が変わることで、魚でありながらスイカのような独特の香りを持つことから「香魚」と呼ばれるようになりました。秋になると産卵期を迎え、河川下流の砂利質の場所で産卵し、その短い一生を終えるため、「年魚」とも呼ばれています。
鮎は初夏から夏にかけて美味しく食べられる
鮎が川に戻ってくるのは春頃ですが、旬は初夏から夏にかけてと言われています。鮎釣りは資源保護のため、各河川で遊漁期間が定められており、多くは5月頃から解禁され、11月から翌年の5月頃までは禁漁期間となります。特に7月頃の若鮎は骨も柔らかく、格別の美味しさです。
鮎を美味しく食べるためには塩焼きがおすすめ
鮎といえば、串に刺して塩焼きにする姿を思い浮かべる方が多いでしょう。鮎の風味を最大限に活かすには、シンプルな塩焼きが一番です。以下に、皮はパリッと香ばしく、身はふっくらジューシーに仕上がる塩焼きのレシピをご紹介します。
- 鮎は皮まで美味しく食べられるので、まずは冷水でヌメリを優しく洗い流します。
- お腹を軽く押して排泄物をしごき出します。(強く押すと内臓まではみ出すことがあるので注意)
- キッチンペーパーなどで水気をしっかりと拭き取ります。
- 全体に塩を振ります。特に焦げやすいヒレや尾には、多めに塩をこすりつけるように付ける(化粧塩)と綺麗に焼き上がります。
- 強火で十分に温めたグリルに鮎を並べ、中火で片面に焦げ目がつくまで焼きます。
- 裏返して同様に焼き、最後に弱火(とろ火)でじっくりと中まで火を通します。
これで、鮎の風味を存分に楽しめる塩焼きの完成です。
鮎の塩焼きをより美味しくキレイにたべるためには
せっかくの美味しい鮎ですから、余すところなく味わいたいものです。頭や骨、尾を残す程度に綺麗に食べられるのが理想ですが、鮎は骨が細く多いため、食べにくいと感じる方もいるかもしれません。ここでは、鮎を綺麗に食べるためのコツをご紹介します。
鮎の骨を上手に引き抜く
鮎を食べる上で気になるのが、細かく多い骨です。これを上手に取り除くことで、格段に食べやすくなり、より美味しく味わうことができます。ポイントは、骨を身から「引き抜く」ことです。これは「一本抜き」とも呼ばれ、鮎を食べる際によく用いられる方法です。
- まず、骨を引き抜きやすくするために、箸で鮎の頭の横から尾にかけて、胴体の上下から優しく押さえて身をほぐします。
- 次に、尾を折り、頭を持ってゆっくりと引き抜くと、中骨がきれいに頭と一緒に取れます。
この方法で、身を崩さずに骨だけを取り除くことができます。
鮎の内臓もそのまま食べられる
多くの魚は調理前に内臓を取り除きますが、鮎は内臓も美味しく食べられるのが特徴です。鮎の内臓の風味は、育った川の環境や食べていた藻の種類によって異なると言われ、その土地ならではの味わいがあります。「香魚」と呼ばれる鮎の独特の香りは、この内臓の風味と相まって、さらに深みを増します。鮎を最後まで存分に味わうためには、ぜひ内臓ごと食べることをおすすめします。