元気で健康な体を保つためには、「十分な栄養、睡眠と適度な運動」が大切であることはよく知られています。特に栄養摂取においては、バランスの取れた食事が不可欠です。しかし、忙しい現代社会では、朝食を抜きがちになったり、食事を簡単に済ませてしまったりすることも少なくありません。また、家族がいても食事時間や内容がバラバラで、共に食卓を囲む機会が減る「個食」や「孤食」といった言葉も聞かれるようになりました。食事は栄養を摂るだけでなく、私たちの心を豊かにする大切な時間でもあります。今回は、その点について考えてみましょう。
心を豊かにする食事の要素とは?
現代人は誰もが忙しい日々を送っており、食事の目的や時間も人それぞれです。過度な手間をかけずに、心を満たす食事とはどのようなものでしょうか。心を豊かにする食事には、いくつかの要素が考えられます。
❖ リラックスできる空間
心が豊かになる食事の前提として、リラックスできる環境は非常に重要です。ほんのひとときでも、自分がほっと心を落ち着けられる場所で、食事を共にする人との会話を楽しみながら食事をとることができれば、心は満たされます。
❖ 五感への働きかけ
美味しいものを味わうだけでなく、他の感覚も使って食事を楽しみましょう。器を選んだり、料理の盛り付けに工夫を凝らしたりすることで、目で楽しむことができます。スパイスやハーブ、旬の食材の香りは嗅覚を刺激し、食欲をそそります。五感をフルに活用し、食事を意識的に楽しむことが大切です。
❖ 食材の旬や年中行事
日本には四季があり、それぞれの季節に栄養価が高く、風味豊かな旬の食材が登場します。季節の移ろいを感じながら、その時期ならではの食材を味わうことは、食の楽しみを深めます。また、お正月やお祭りなど、年中行事に合わせた食事も、文化を感じる豊かな体験となります。
❖ 負担感のない準備
食材選びから調理に至るまで、過度な負担を感じずに準備できることが理想です。毎日のことなので難しい面もありますが、例えば週に一度は簡単なメニューにする、家族や友人と一緒に調理過程を楽しむ、家庭菜園で食材を育ててみるなど、工夫次第で調理の負担を減らし、楽しみを増やすことができます。
毎日でなくても、少し時間に余裕がある時にこれらの要素を意識することで、いつもより心も体も豊かになる食事を楽しむことができるのではないでしょうか。
心を豊かにする渓流魚料理という選択
心を豊かにする食事の一環として、普段あまり馴染みのないかもしれない渓流魚(川魚)を使った料理に挑戦してみるのもおすすめです。「渓流魚」と聞くと、自然豊かな場所で食べるアユの塩焼きや、手間暇かけて作られた郷土料理などを思い浮かべる方もいるかもしれません。日本人にとってどこか懐かしく、日本の原風景を思わせるイメージがあります。
渓流釣りから始めてみるのも、準備段階から自然を満喫できる楽しみ方の一つです。釣りが難しい場合は、最近では川魚もオンラインショップなどで手軽に購入できるようになりました。下処理済みのものや切り身タイプを選べば、家庭でも簡単に調理できます。いつもの魚料理とはひと味違う川魚料理は、食卓での会話を弾ませるきっかけにもなるでしょう。
どこか懐かしい日本のふるさとの風景を感じさせるような渓流魚は、それだけで心を和ませてくれます。季節や地域によって獲れる魚や旬が異なるため、食を通じて季節感や地域性を味わうことも、「心を豊かにする食事」と言えるでしょう。
渓流魚(川魚)を使った代表的な料理
渓流魚にはアユ、フナ、ワカサギなど様々な種類があり、日本各地で多様な調理法で食されています。地域に根ざした郷土料理として古くから親しまれているものも少なくありません。
- フナのなれずし:琵琶湖周辺で有名な発酵食品。フナを塩と米で乳酸発酵させ、独特の風味と保存性を高めた料理です。
- コイこく:ぶつ切りにしたコイを味噌仕立ての汁で長時間煮込み、骨まで柔らかくした伝統料理。
- 川エビの煮物:高知県四万十川などで獲れる川エビを使った煮物。
- アメドジョウの旨煮:岐阜県の飛騨高山地方などで食される、アジメドジョウを使った煮物や唐揚げ。
今まで試したことのない川魚料理に挑戦してみることは、食の楽しみを広げる良いきっかけになるかもしれません。(※参考: 「特集2 新・日本の郷土食(2)」農林水産省 ウェブサイト)
まとめ
現代は調理器具も進化し、外食も手軽になりました。食事の準備に手間をかけずに済む時代だからこそ、時には時間をかけて「心を豊かにする食事」を意識してみてはいかがでしょうか。普段あまり食べる機会のない渓流魚(川魚)を使った料理は、栄養摂取だけでなく、食卓に新鮮さをもたらし、会話のきっかけにもなります。ぜひ、心豊かな食体験を楽しんでみてください。